第44章 彼女は泣きながら「蒼生、助けて!」と言った

夜更け。氷室蒼生は身支度を終え、眠りにつこうとしていた。

立花結月がかつて眠っていたベッドへ戻る。洗っていないはずなのに、シーツに残っていたはずの薔薇の香りは、もうほとんど消えていた。

枕の下から白い絹のリボンを引き抜き、目元にそっと当てる。なめらかで、軽い。彼女がふざけて自分の目を覆ったとき、指先がかすめた感触に似ていた。

少しだけ冷たくて、やわらかい。

返しそびれたまま、いつしかそれは彼の「寝るための目隠し」になっていた。

そのとき、きちんと閉まりきっていない窓の隙間から、ひゅう、と風が差し込んだ。骨の芯まで刺すような冷気。

室温が、ふっと落ちる。

蒼生はリボンを外し、掛け...

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