第45章 彼女を温める

氷室蒼生は、なりふり構わず彼女の別荘へ踏み込んだ。想定していた最悪の事態は、立花結月が洗面所で倒れている――その程度だった。

だが、ドアを開けた瞬間、目の前にあったのは想像を遥かに超える残酷な光景だった。

立花結月は昨夜のドレスのまま、浴槽に凭れていた。水は四分の一ほどしか張られていない。

両腕は頭の後ろへ持ち上げられ、ネクタイで蛇口に縛りつけられている。身動きひとつできない。

彼を見上げた瞳には涙が溜まり、蒼生が一度も見たことのないほど弱々しい顔で、縋るように訴えた。

「蒼生……助けて」

胸が潰れる。目を背けたくなる。けれど背けられない。

蒼生の脳内で、理性という名の糸がぷつ...

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