第71章 立花結月はきっと妊娠した!

立花結月は藤井修也の姿を視界に入れた瞬間、全身の骨がふにゃりと溶けるように力が抜けた。手首の傷はとうに塞がり、いまは痕が残るだけだというのに。

――あのとき傷つけられた場所が、まだ痛む。

見えない冷たい風が四方八方から骨の髄へ潜り込んでくるみたいで、ぞくり、と背筋が粟立つ。

結月は、また浴槽の中へ引きずり戻された気がした。周囲は大雪に埋もれ、陰湿な冷たさが四肢百骸から全身へじわじわ広がっていく。背中には冷や汗がにじみ、呼吸が浅くなる。

寒い。

怖い。

得意だったはずの演技すら、頭から抜け落ちた。脳内を占めるのは、幽霊みたいな藤井修也がまた来た、という恐怖だけ。

藤井修也は装いを...

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