第76章 欲しいの、あなたはくれる?

立花結月は感情を整え、ゆっくりと病院の中へ足を踏み入れた。

藤井修也に離婚届を出してから今日まで、彼が振り込んできたのはほんの一部だけ。財産の清算は、まだ何ひとつ終わっていない。

残り二十日あまり――その間に、彼は自分を宥めて連れ戻すつもりなのだ。

藤井知代のあの言葉が、胸の奥で何度も反芻される。最初から、自分が間違っていたのだと。

彼が離婚しないのは、結月への情だけが理由じゃない。離婚のコストが大きすぎる。

たとえ自分が三分の二を放棄したとしても、夫婦の共有財産は基本的に折半だ。藤井修也の資産は、婚姻後に爆発的に増えたものが大半――つまり、その分け前を手放すのは痛い。

彼は結月...

ログインして続きを読む