第77章 略奪

目の前の女――立花結月から、かすかに漂う薔薇の香り。

それはまるで、理性を溶かす媚薬だった。

同じベッドで何年も眠ってきた。彼女の身体の隅々まで、もう味わい尽くしたはずなのに。

それでも、こんなふうに不意に距離を詰められると、心も呼吸も、結月に奪われてしまう。

金だの地位だの、そんなものは元からどうでもいい。

今の自分なら、全財産を結月に渡したところで、短い時間でいくらでも稼ぎ直せる。

欲しいのは――彼女だけ。

藤井修也は小さく頷いた。

「……いい」

立花結月は、もう少し手間がかかると思っていた。

なのに、あまりにもあっさり承諾されて、逆に胸の奥がざわつく。

――何を企...

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