第84章 街中を探し尽くしても、彼女は見つからなかった

雪は音もなく、二人の傍らへ舞い落ちる。静まり返った夜に残るのは、氷室蒼生の落ち着いた声だけ。耳の奥で、いつまでも反響していた。

立花結月は、どこかおかしいと薄々感じていた。氷室蒼生は自分に対して、あまりにも甘すぎるのではないか。

そう――欲しいと言えば与え、望めば叶える。そんな「与え尽くす」甘さだ。

弟でもない。友だちでもない。家族でもない。

彼の自分への情を、言葉で線引きするのは難しかった。

男女の間に絶対の「純粋な友情」なんてない。結月は幼いころから、それを知っている。

たとえば自分と藤井修也もそうだ。最初は仲のいい友だちだった。けれど、恋というものを知りかけた曖昧な年頃、彼...

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