第9章 誰よりも君を愛している、逃げようなどと妄想するな!

愛し合っていたころですら公にしなかった。まして離婚する今になって、立花結月がわざわざ世間に見つかるような真似をするはずがない。

彼女は男の腕を掴み、足早にその場を離れた。

数日前まで泣き腫らして、抜け殻みたいだった結月はもういない。瞳にはふたたび光が宿っている。藤井修也がいちばん好きで、同時にいちばん怖れている光。

立花結月は、眩い真珠のような女だ。ようやく手元に引き寄せ、家の奥に隠しておいたのに――その真珠がまた世に出ようとしている。胸の奥がざわついて仕方ない。

長い移動の疲れが体に残り、外はもう夕暮れだった。

「藤井修也。話がある」

「松田さんがスープを煮てる。家で話そう。ホ...

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