第93章 記憶喪失

藤井修也が消毒液の匂いに満ちた病室へ足を踏み入れたとき、立花結月はおばあさまに粥を食べさせていた。

「おばあちゃん」

藤井修也が小さく呼ぶ。掠れた声だった。

立花結月はちらりと彼を見る。身なりはきちんとしているのに、頬はひと回りこけ、顔色は相変わらず青白い。どこか病人めいた陰が残っていた。

たった一か月。

かつての恋人は、もう見知らぬ人間に変わってしまった。

おばあちゃんは藤井修也を見上げた。考え込むように首を傾げる。以前は澄んでいた瞳は濁り、焦点さえ合っていない。

藤井修也は腰を折った。

「おばあちゃん、俺だよ、修也。忘れちゃった?」

おばあちゃんは、彼の言葉をなぞるよう...

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