第74章

妃那視点:

葉夜の表情がどこか妙で、気になって行き先を訊ねたのに、彼は「着いてからのお楽しみ」とでも言いたげに、もったいぶって教えてくれなかった。

やがて車が止まったのは、一軒の古い城の前だった。

どっしりとそびえ立つ古城は、夕暮れの陽を受けて重苦しいほどの古色を帯びている。一目で、相当な年月を刻んできた場所だと分かった。

そこでようやく、葉夜が種明かしをしてくれる。

「ここが篠川一族の本家だ」

「ふうん」

私は納得したように頷き、わざと横目で睨みながら、軽口半分に責めるふりをする。

「口では『世界でいちばん愛してるのは妃那だ』なんて言っておいて、自分はこんな立派なお城を持っ...

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