第93章

金彦視点:

妃那が本当に気を失ったのを確かめると、俺は素早く彼女を横抱きにして、庭のいちばん奥へと駆けた。

そこには半分開いた鉄の扉があり、その外には黒いセダンが一台停まっている。

妃那を抱いたまま車の前まで行くと、内側からドアが開き、心希が降りてきた。俺に顎で合図し、人を中に押し込めと示す。

心希は封筒をひとつ放ってよこした。

「新しい身分証よ。運転手があなたたちを港まで送る。港にはもうヨットを用意してあるから、そのまま乗ってここから遠く離れて。叶夜の追跡と捜索は、私ができる限り止めておくわ。私は見返りなんて要らない。ただひとつだけ条件がある――二度とここには戻ってこないこと」

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