第5章

 ハワイの午後。陽光が海面を灼き、まるで溶け出したサファイアのように青く輝かせていた。

 私はパラソルの下で寝そべり、あの家族のやかましさから離れた、得難い静寂を享受していた。

 だが、その心地よさは、特命秘書の佐々木からの電話によって破られた。

「小崎様、休暇中にお邪魔して申し訳ございません」

 佐々木の声は低く抑えられていたが、その背後からはオフィスの喧騒が微かに漏れ聞こえてくる。

「ですが、これをお聞きになる必要があると思いまして」

「どうしたの?」

「隼人様が過去三十分の間に、経理部へ二十回も電話をかけてこられました。アスペンで危機的状況にあるらしく、個人の口座へ直ちに...

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