第6章

 海水でぐっしょり濡れたポケットから、私は携帯を引きずり出した。森の中で絵理奈ともみ合ったとき、彼女の懐からついでに抜き取ったものだ。まだ削除しきれていなかったボイスメッセージを再生する。

 正司の声が、耳元でいきなり爆ぜた。

「早苗を崖の向こうへ連れて行け。そこで始末しろ。手際よくな。逃げようとして足を滑らせて落ちた、って形にしろ」

 圭也の表情に、ようやくひびが入った。気づけば両手は拳を握りしめている。

 だが、彼はすぐにそれを押し殺した。

「五年前、お前はブランドバッグと……お前の高級マンションを守るために、俺をきれいさっぱり売った」冷えた声が落ちる。

「残った自尊心まで泥...

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