第106章

鈴野雫は信じられなかった。自分は最初から最後まで鼻先を引き回され、値を吊り上げられていたのに――「死んでもこの女には負けない」と意地になって、ひたすら上を被せ続けたのに。

それが、相手はふわりと一言。

『譲るわ』

……それで終わり?

ほんの数秒で状況を飲み込んだ鈴野雫は、怒りが極まって、逆に笑ってしまった。

『私で遊んだの? 宮原念……いいわ。ほんっと、いい度胸ね!』

こんな「一点もの」のドレス、そもそも四百万の価値なんてない。なのに大金を叩かされ、上乗せの特典すら一切なし。完全にカモにされた。

宮原知子は口元をゆるく持ち上げ、無垢を装って両手を広げる。

『え? 鈴野さんが欲...

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