第107章

ちくしょう、宮原念……!

鈴野雫は苛立ちを隠しもせず、ボディガードの脛を蹴り飛ばした。

『ぼさっとしてないで、さっさと行きなさい!』

『は、はいっ』

男は文句ひとつ言えず、慌てて後を追う。

カウンター前は、ようやく静けさを取り戻した。

スタッフたちは息を殺し、乱れた台をそっと整えながら、顔色をうかがうばかりだ。

入口で、視線がぶつかった。

宮原知子は相手の目を探るように、慎重な色を瞳の奥に宿す。

『さっきは助けていただいて……ありがとうございます。失礼ですが、あなたは?』

深い気配。隙のない目。

たった一言で鈴野雫を押さえ込む。――ただの名家の坊ちゃんではない。

それ...

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