第108章

宮原知子はベッドの背にもたれ、鼻を刺す消毒液の匂いを吸い込みながら、傷の痛みも相まって、言葉にいつもの余裕がなかった。

受話器の向こう、男の声は低く、冷えた刃のようだ。

『両社の共同名義デザイン案件、量産工程に入った。工芸の細部について最終確認が必要だ。それと、後続のハイエンド・カスタムラインの設計アーカイブは今日まとめる約束だったが、君のファイルがまだ同期されていない』

宮原知子は身体の不調を押し殺し、少し考えてから答える。

『ファイルは全部整理済みです。あとでリモートで特別補佐に送ります。工芸の細部は添付に注釈を入れてありますし、双方の審査基準はすべて満たしているので、二次修正は...

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