第116章

彼女は眉をわずかに寄せ、瞳いっぱいに悔しさを滲ませながら、長川輝夫のスーツの袖口をきゅっと引いた。拗ねたように、恨み言を混ぜて言う。

『輝夫お兄さん、さっきのはひどいよ……。私、すぐ横にいたのに、みんな私のこと見て笑ってて……恥ずかしくて死ぬかと思った。このパーティーだって本当は輝夫お兄さんに付いて来ただけなのに、オープニングダンスまで逃しちゃったし。これからどう立ち回ればいいの? あの人たちに、どう顔向けすればいいの……』

ここまで言えば、さすがに慰めてくれるはず――そう思った。

けれど長川輝夫は、冷えた視線を一度だけ向ける。

『その格好で踊れるのか?』

鈴野雫の表情が、ぴたりと...

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