第169章

その子は幼いころから母親がいなかった。家の者は皆、痛いほど気にかけ、目に入れても痛くないほど守り、甘やかして育ててきた。

『直志、おまえ……その、なんとかいう「きれいなお姉さん」が本当にそんなに好きなのか?』

長川明広が尋ねた。

『うん!』

長川直志は勢いよくうなずく。

『ぼく、きれいなお姉さんがいちばん好き! きれいなお姉さんにママになってほしい。ずっと、ぼくとパパといっしょにいてほしい!』

長川明広はしばらく黙り込み、やがて深く息を吐いた。

『……わかった。この件は、頭ごなしに反対はしない。ただし条件がある』

『条件って?』

長川輝夫が問う。

『一年以内に、長川グルー...

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