第174章

宮原知子は長川直志の額にちゅっとキスを落とし、明かりを消して廊下へ出た。そのまま自分の部屋へ向かった――はずが、次の瞬間、硬い胸板にぶつかってしまう。

心臓がどくん、と跳ねた。顔を上げると、長川輝夫がバスタオルを腰に巻いただけの姿で立っていた。腹筋の輪郭があらわで、こちらをまっすぐ見つめている。

知子は視線を泳がせ、言った。

『あなたの部屋はそっち』

そう言って、向かい側の客室を指さす。

『あっちはお湯が出ない』

長川輝夫が一歩詰める。距離は、指一本分もない。

『そんなはずない。昨日も使った』

知子は信じなかった。

『自分で見ろ』

半信半疑のまま、知子は客室側のバスルーム...

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