第176章

「俺も暑い」長川輝夫が、顔色ひとつ変えずに言葉を継いだ。

長川直志は小さく眉をひそめ、きょろきょろと目を動かす。どこかおかしい気がするのに、何がおかしいのかは掴めない。結局それ以上考えるのをやめ、宮原知子の胸元へもぞもぞと潜り込むと、また目を閉じた。ほどなくして、すうっと寝息が聞こえ始める。

「動かないで。直志、やっと寝たんだから」

長川輝夫はその隙に宮原知子を抱き寄せ、闇の中で低い声を落とした。どこか、してやったりの笑いが混じっている。

「……どっか行って」

宮原知子は歯を食いしばり、声を極限まで絞った。

長川輝夫はどこへも行かない。むしろ手を伸ばし、掛け布団をぐいっと引き上げ...

ログインして続きを読む