第186章

ぽっちゃりした男の子がクッキーを受け取ってひと口かじった瞬間、目をまん丸に見開き、腹の底から叫んだ。

『なにこれ、めちゃくちゃおいしい! ママ! このお姉ちゃん、ぼくのママにして!』

その一声を合図に、ほかの子どもたちまで面白がって騒ぎ出す。

『ぼくも!』

『長川直志、いいなあ! ママ、かわいいしクッキーも作れるんだもん!』

さっきまで得意げに、みんなの羨望を受け止めていた長川直志の笑顔が、その言葉でふっと消えた。

直志は宮原知子の腕にぎゅっとしがみつき、顔を彼女の体にうずめたまま、むすっとした声で言う。

『この人はぼくのママ! みんなのママじゃない! 勝手に呼ばないで!』

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