第19章

宮原知子が階段を下りてきたとき、長川輝夫はまだ同じ場所に座ったまま、さっきとまったく同じ姿勢を崩していなかった。表情は凍りついたように動かず、喜怒の端緒すら読み取れない。

長川玄哉は彼女の姿を見つけるなり、すぐに立ち上がって駆け寄り、手荷物のキャリーケースを受け取った。

「行こうか?」

「うん」

宮原知子は振り返りもしない。三年間、自分を閉じ込めてきた豪奢な檻から、一歩、また一歩と外へ出ていく。

玄関の扉が閉まった瞬間、彼女は胸の奥から長く息を吐いた。

夜風は冷たい。頬を撫でるその冷えが、逆に彼女をこれ以上ないほど醒まさせた。自由だ――そう、身体が先に理解する。

エンジン音が遠...

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