第198章

宮原知子はキッチンで慌ただしく手を動かしていた。リビングのソファでは長川直志がテレビを眺めている。

「おかえり」

物音に気づいた知子が台所から顔を出し、ふわりと笑う。

「ご飯、もうすぐできるから。先に手、洗ってきて」

長川輝夫は「……ああ」と短く返したきり、余計なことは言わなかった。

知子は彼の顔色が冴えないのに気づき、胸の奥がざわつく。けれど、その理由を尋ねることはしなかった。

夕食の席でも、輝夫は終始黙ったまま、どこか上の空で茶碗の飯をかき込むだけだ。直志が話しかけても、曖昧に相槌を打つ程度。

知子の不安は、じわじわと膨らんでいった。

食後、彼女は直志を部屋へ追い立てた。...

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