第29章

病院の廊下で、宮原知子は検査を終えたばかりだった。医師の説明では、驚きによる偽陣痛のようなもので、大事には至っていないという。

知子と周防おばさんは病院の下の食堂に移り、湯気の立つワンタンをそれぞれの前に置いて向かい合った。

「知子、もうこんな暮らし続けられないよ。あんたがどんな日々を送ってたのか、いまさら思い知った。退院したら、おばちゃんと一緒に家に帰ろう」

周防おばさんは目を潤ませ、知子の口元についたスープをそっと拭ってやる。

宮原知子は何も言わず、黙々とワンタンを口に運んだ。

「先輩? 周防おばさん?」

すぐ隣から、澄んだ声がした。二人が振り向くと、長川玄哉がトレーを手に、...

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