第30章

藤原お爺様はため息をつき、それ以上は何も問わなかった。

このところのやり取りで、藤原お爺様もとうに見抜いていたのだ。長川輝夫という男は、仕事では切れ者かもしれない。だが恋愛や結婚となると、紛れもない最低の人間だと。

――彼は、宮原知子には釣り合わない。

宮原知子の行動範囲は、いつしか長川家の別荘と藤原お爺様のもと、この二つに絞られていった。

岸江立人が、ようやく会社のごたごたを片づけ、恩師を訪ねてきた。

午後のキャンパスは、陽射しがやけに心地いい。

藤原お爺様への挨拶を終えた宮原知子と岸江立人は、講義棟の脇の木立の小径を並んで歩く。

彼女はゆったりした淡い水色のマタニティワンピ...

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