第38章

「おまえ……いったい、どこまで彼女を傷つければ気が済むんだ。どこまで壊せば満足なんだよ! 忘れたのか? あのとき、命がけでおまえを助けたのは誰だと思ってる!」

長川玄哉の怒声が、執務室の空気を震わせた。

長川輝夫は玄哉を見返す。瞳の奥をかすめた複雑な色は、ほんの一瞬で冷えた無表情に塗りつぶされる。

「わざわざ長川まで来て、彼女の代弁か? 離婚したいと言い出したのも、子どもを産むと決めたのも、全部あいつだ。……その口の利き方、どこで覚えた」

「口の利き方? 笑わせるな。おまえみたいに善悪の区別もつかない兄貴、こっちは持った覚えがねえ」

玄哉は書類の束を掴むと、勢いよく机へ叩きつけた。...

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