第56章

宮原知子は一晩じゅう寝返りばかり打って、結局ほとんど眠れなかった。翌日、彼女は約束の時間より三十分も早くレストランに着いていた。

淡い水色のワンピースをわざわざ選び、薄化粧で徹夜のやつれを隠す。窓際の席に腰を下ろすと、手のひらがじっとり汗ばんでいて、そっとスカートに拭い付けた。

視線は入り口に釘づけのまま。秒針がやけに遅い。

ようやく扉が開き、長川輝夫が長川直志の手を引いて入ってきた。

直志も青い服を着ていて、小さな顔はつるんと清潔そうだ。入るなりきょろきょろと見回し、宮原知子を見つけた瞬間、ぱっと目を輝かせた。

「宮原おばさん!」

直志は輝夫の手を振りほどき、小走りで駆け寄って...

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