第64章

宮原知子が蹴りを入れた瞬間、足の裏に鋭い鈍痛が走った。

ぎゅっと眉根を寄せ、悲鳴だけは飲み込む。目の前の長川輝夫を冷ややかに睨みつけると、瞳の奥の怒りが今にも溢れそうだった。

長川輝夫が口元を吊り上げる。

『宮原さんは気が強い。力もあるな』

宮原知子は痺れる足裏をこすりながら、何とか背筋を伸ばす。

『気が弱い人間に交渉の席は務まりません。……それより長川様、よほどお暇なんですね。いつも私ばかり見ている』

長川輝夫が二歩、前へ出る。距離は一気に詰まり、半歩もない。

彼の纏う雪松のような冷たい香りが、予告もなく宮原知子を包み込んだ。反射的に半歩引くが、背中に車のドアが当たって逃げ場...

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