第65章

電話の向こうで伊藤秘書が一瞬言葉を失い、すぐにかしこまって答えた。『はい、長川様。すぐ手配いたします』

通話を切ると、長川輝夫は車内のシートに深くもたれ、顔を上げて宮原知子のいる階を見据えた。

長川輝夫が長川家に戻ると、長川直志の頭から髪を数本、ぶちっと抜いた。

長川直志は小さな頭を「?」みたいに傾け、無邪気な好奇心でいっぱいの目をきらきらさせて、向かいに座る長川輝夫を見上げる。『パパ、さっき急に髪の毛抜いたの、なんで? 痛かったんだけど!』

長川輝夫はとっさに言い訳を作った。『白髪が混じってるように見えたから、抜いて確かめただけだ』

『白髪?』長川直志は一気に緊張し、テーブルの上...

ログインして続きを読む