第72章

食事を終えると、長川輝夫は運転手に、先に鈴野雫を送るよう命じた。

鈴野雫は不満げだったが、逆らえるはずもない。

ただ、宮原知子をきつく睨みつけ、唇を噛んで去っていった。

車内。

長川直志は宮原知子の肩にもたれ、ほどなく眠りに落ちた。

長川輝夫はその寝顔を見つめ、彼女の柔らかな横顔へ視線を移す。目を細め、低い声で言った。

「……子ども、好きなのか」

「直志くん、可愛いですから」

偽りのない言葉だった。

「なら――前に一度しか会わせなかったのは、俺の判断ミスだったな」

宮原知子は理解していた。これは探りだ。

彼女は静かに目を上げ、平然と返す。

「長川様、商売でもそんなふう...

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