第74章

長川輝夫は視線を引き戻す。手首の高級腕時計が、どこかよそよそしい光を放っていた。『金がないのか?』

葉山歩美は涙をぬぐい、それでも必死にこらえる。『輝夫、大丈夫。いつまでもあなたに頼ってばかりじゃいられないもの。あのとき私……いまはもう卒業したし、仕事を見つけて稼ぎたいの。大学ではデザインも勉強したけど、あれってお金がかかりすぎて……。就活しても、どこも実績や経歴がある人しか取らないから、私じゃ入れなくて……』

琥珀色の酒が喉を滑り落ちる。

氷がからん、と揺れる音の合間に、男はゆっくりと目を向けた。口調は淡々としている。『それで、ここで酒を売って時間を無駄にしてるのか?』

葉山歩美の...

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