第77章

宮原知子の声には、かすかな不満が滲んでいた。

長川輝夫が眉をわずかに持ち上げる。

『悪かった』

――こいつ、余計なことは喋ってないみたいだ。

『急に海外との会議が入ってさ。慌ててて、携帯はマナーモードにしてた。君からの着信、気づかなかった』

宮原知子はまだ納得していない。

『だからって、あなた……』

『パパ!』

長川直志が彼を見つけた。嬉しそうに駆け寄る……かと思いきや、顔には小さな恨みが乗っている。

『遅いよ! ドア叩いたせいで、きれいなお姉さんびっくりして、足ぶつけちゃったんだよ!』

その瞬間、長川輝夫の動きが止まった。

深い視線がすっと下がり、宮原知子の足首に落ち...

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