第80章

宮原知子は一瞬、目を瞬かせた。『長川様? 緊急会議があるんじゃなかったんですか』

――すぐに腑に落ちる。長川直志が危ない目に遭いかけた。だから彼は焦って駆けつけてきたのだ。

知子はさらりと身を引き、淡々と言った。『どうぞ。スリッパありますよ。新品です』

長川輝夫は眉をわずかに上げた。自分がよその家に上がって、スリッパを履かされる日が来るとは思っていなかった。

だが彼は何も言わず、黙って履き替えた。

――ところが、リビングに足を踏み入れた途端、目に飛び込んできたのは、ラグの上の「大」と「小」。

宮原知子はまだ仕事が片づいていないらしく、図面に視線を落としたまま、集中してペンを走らせ...

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