第81章

ほどなくして、コールは二度鳴っただけでつながった。

『先生、私です、知子です』

受話器の向こうが一瞬だけ息を呑み、次の瞬間、声が弾んだ。

『知子か? この悪い子め、よくも今まで連絡ひとつ寄こさなかったな!』

宮原知子は込み上げるものを押し込みながら言った。

『ごめんなさい、先生……こんなに長く、ご無沙汰してしまって……』

『無事ならそれでいい』

藤原お爺様は何度もそう繰り返し、痛むほどの労わりを滲ませる。

『つらかっただろう。どうだ? 長川輝夫のあのガキ、またお前をいじめたんじゃないだろうな?』

長川輝夫の名が出た瞬間、宮原知子の瞳がふっと翳った。

『大丈夫です。海外では...

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