第83章

長川輝夫は踵を返すと、そのまま書斎へ向かった。

床まで届く窓の前。

長川輝夫の表情は、どこか翳っている。

宮原念、宮原知子……。

翌日。

藤原家の宴席。

手入れの行き届いた庭は雅やかで、行き交う客は皆、商界で名の通った面々ばかりだった。

業界の泰斗として知られる藤原家の催しは、規模こそ大きくない。だが、その「重み」が違う。

招かれるだけで格が上がる――そんな場だ。

宮原知子は黒いサテンのドレスに身を包み、長い髪を簡素にまとめて、静かに会場へ足を踏み入れた。

入口のスタッフが丁寧に声をかける。

「いらっしゃいませ、お嬢様。招待状はお持ちでしょうか」

宮原知子は細い眉をわ...

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