第85章

露台がちょうど目の前にあった。宴会場とは薄いレースのカーテン一枚隔てているだけなのに、こちら側だけ妙に静かだ。

喧騒のど真ん中にぽっかり空いた、貴重な避難所。

(たぶん、ここまで来る人はいないよね)

宮原知子はそのまま足を踏み入れ、手すりにもたれた。

夜風が頬をなで、ひんやりとした冷たさが肌に残る。

(はあ……最悪。いきなり目の敵にされるとか意味わかんない。あいつ、求愛で羽広げてる孔雀かよ。縁起でもない。少しは大人しくしててくれない?)

眉間を指で押さえると、胸の奥のもやもやが増しただけだった。

長川輝夫に関わる人間も出来事も、ろくなものじゃない。

「へえ。羽を広げた孔雀、ね...

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