第89章

『それに直志くんって本当に可愛いんです。私、心から大好きで……。まだ小さいでしょう? いちばん母親の愛情が必要な時期ですし……』

言葉の端々から、彼女が進んで子どもの面倒を見るつもりだと伝わってくる。

長川輝夫は眉間の皺を、さらに深くした。

鈴野雫の思惑など、痛いほどわかる。

だが――直志は。

しばし沈黙したのち、声色だけが冷える。

『子どものことは、俺が手配する。もう遅い。早く休め』

鈴野雫が何か言うより先に、長川輝夫は通話を切った。

そのまま二階へ上がり、子ども部屋の扉を開ける。

ベッドでは長川直志が、ぐっすり眠っていた。

部屋を照らす暖色のライトは柔らかく、小さな身...

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