第90章

使用人や家庭医は、そろって呆然としていた。

あれだけ代わる代わる宥めても、長川直志はまるで取り合わなかったのに――。

宮原念が来た途端、たった数言であっさり落ち着いてしまったのだ。

その親しさに、空気が揺れる。

少し離れたところで長川輝夫が立ち尽くし、瞳の奥に複雑な色を滲ませた。

視線は宮原知子へ。何を考えているのか、読めない。

宮原知子は彼を気に掛ける余裕もない。

『直志は落ち着いた。薬をちょうだい。私が飲ませる』

『は、はい……!』

『す、宮原さん。この薬は若様に口から飲ませてください。錠剤は十分快後にお水を……』

『二時間で熱が下がらなければ、点滴が必要になります』...

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