第97章

宮原知子は口元をひくりとさせ、直志を抱き上げて立ち上がった。できるだけ平静を装いながら言う。

『じゃあ、私は先にこの子を連れて帰りますね。長川様はここまでで——』

ところが長川輝夫は、脇に置かれていたスーツケースをひょいと持ち上げた。

『ああ。行くぞ。君の家へ』

宮原知子は別荘の玄関を出る前に、ぴたりと固まった。

信じられない、という顔で振り返る。

『……今、なんて? あなたも行くの?!』

『他に何がある』長川輝夫は眉を上げ、当然だと言わんばかりに言い放つ。

『俺の息子が君と行くんだ。安全のために俺も一晩世話になる。何か問題でも?』

『問題しかない!』宮原知子は歯噛みし、直...

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