第7章
素子の視点
街の反対側で、淳一のほうに何が起きているのか――私はまったく知らない。
知りたくもない。
二カ月だ。この孤児院で二カ月を過ごした。十年前、私と淳一が一緒に作った場所。あの頃の私たちは路地裏から這い上がったばかりで、手にはまだ血の匂いが残っていた。それでも、自分たちが孤児院で育ったことだけは忘れなかった。だから、捨てられた子どもたちを受け入れるためにここを建てた。
帳簿も、住所も、あらゆる書類は私名義。場所の詳細は淳一にすら知らせていない。仇に弱みを握られないための安全策だった。今、その「安全策」が守っているのは――私自身だ。
皮肉? さあね。分かるのは、この二...
ログインして続きを読む
チャプター
1. 第1章
2. 第2章
3. 第3章
4. 第4章
5. 第5章
6. 第6章
7. 第7章
8. 第8章
9. 第9章
縮小
拡大
