第8章

素子の視点

「ママ!」

 家の中から、小さな女の子がぱたぱたと駆け出してくる。両手を伸ばしたまま、まっすぐ私に飛びついてきた。

 私は振り返り、笑ってその子を抱き上げる。まだ四歳。いつも私にべったりだ。

 翼が、ふっと固まった。

 私の腕の中の女の子を見つめる目は、まるで信じられないものでも見たみたいで――次の瞬間、はっと我に返ると鉄門へ駆け寄り、手を伸ばしてその子の服をつかんだ。

「その人は、俺のママだ!」

 声が裏返っている。泣きそうな、いや、もう泣いている声だった。

「お前のじゃない! ママって呼ぶな!」

 私は女の子を抱き寄せ、翼へ顔を向ける。

「戻りなさい」

...

ログインして続きを読む