第3章

時間が止まったかのようだった。

リビングの空気は、ナイフで切り裂けそうなほど重苦しい。玄関に立つ海翔を私が見つめると、海翔もまた私を見つめ返した。お互いの顔には、信じられないという色が浮かんでいる。

「海翔?」私の声は、かろうじて聞き取れるほどの囁きになった。「どうして、ここに……?」

「こんなこと、ありえない……」海翔の声は衝撃でかすれていた。

お母さんと誠一おじさんは、何が起きているのか全く分からず、困惑した様子で私たちを交互に見ている。

「二人はもう知り合いなのかい?」誠一おじさんが気まずそうに咳払いをした。

「知り合いですって?」お母さんは興奮で飛び跳ねんばかりだ。「最高じゃない! 二人が仲良くできるか心配してたのよ! 海翔くん、絵里奈は私の娘なの。あなたの未来の妹よ! 絵里奈、こっちが海翔くん。これからは本当の兄妹になれるのよ!」

兄妹。

その言葉は、銃弾のように私の胸を撃ち抜いた。海翔に目をやると、彼の顔は土色から死人のように真っ青に変わっていく。かつてあれほど優しく私を見つめてくれた瞳には、今や嫌悪とパニックの色しか宿っていなかった。

「ちょっと、風にあたってくる」海翔はそう言い捨てると、振り返りもせずに裏口へと駆けだした。

「海翔?」誠一おじさんが呼びかける。「もうすぐ夕食だぞ」

「いらない」ドアがバタンと閉まる音がした。

私は両親と当たり障りのない会話を続けたが、頭の中ではたった一つの考えがこだましていた。どうして、こんなことになってしまったんだろう?

十五分後、私はこっそりと裏庭へ出た。月明かりの下、海翔は苛立ったように髪をかきむしりながら、薔薇の茂みのそばを行ったり来たりしていた。

「海翔、話せる?」

彼は氷のように冷たい視線で振り返った。「何を話すんだ? 俺たちが義理の兄妹になるっていう、吐き気のする事実についてか?」

「吐き気がする?」胸が引き裂かれるようだった。「私たちの関係が、吐き気がするって言うの?」

「お前に『お兄さん』なんて呼ばれるのを想像するだけで、気分が悪くなる」彼の声からは、温かみが完全に消え失せていた。「お前にキスしたくせに、今度はお前が俺の義理の妹になるなんて、自分が変態みたいで気持ち悪い」

途端に涙で視界が滲んだ。「これは私たちのせいじゃない! 何か方法があるはずよ、きっと――」

「方法だと?」海翔は無慈悲に私の言葉を遮った。「俺たちが恋人同士の義兄妹だって、世間中に言いふらすのか? みんなに気味悪がられて、変人扱いされたいのか?」

「じゃあ、どうしろって言うの……?」

「明日から、俺たちはただの義兄妹だ」彼は背を向けた。「俺たちの間にあったことは、全部忘れろ」

「海翔、待って!」私は涙ながらに彼を追いかけ、その袖を掴んだ。「本当に全部捨てるつもりなの? 私たちの今までを? あなたが言ってくれた言葉も、約束も――」

彼は私がよろけるほど乱暴に腕を振り払った。

「もう何もかもが違うんだ」

「違うのは肩書きだけじゃない! 私たちの気持ちは――」

「気持ち、だと?」彼は乾いた笑いを漏らした。「今、俺に何か感じられるとでも思うのか? お前の顔を見るたびに、この状況がどれだけめちゃくちゃか思い知らされるだけだ」

彼は一度も振り返らずに去っていった。月明かりの下、完全に打ちのめされた私だけが、一人取り残された。

これがどん底だと思った。でも、私は間違っていた。

月曜の朝、海翔が真琴と手を繋いで校門に現れたとき、私は世界中から笑われているような気がした。真琴はチアリーダー部の部長で――茶髪で背が高く、完璧なスタイルを持つ、典型的な人気者だ。

「見て、あそこ」廊下に囁き声が波のように広がる。「海翔と真琴よ! いつの間に付き合い始めたの?」

「絵里奈はどうしたの? あの二人、付き合い始めたばかりじゃなかった?」

「聞いた? あの二人、本当は義理の兄妹なんだって。絵里奈が自分の兄を誘惑したらしいわよ」

全ての視線が私に突き刺さり、全ての言葉が私の心を抉るのを感じた。

食堂はさらに最悪だった。海翔と真琴はわざと一番目立つ中央のテーブルを選び、真琴は海翔の膝の上に座って、私の目の前で彼にあーんをして食べさせていた。

「海翔、あんな女から離れて正解よ」真琴の声はわざと大きく、私に聞こえるように言っている。

海翔は私を一瞥した。その瞳には、かつての優しさの面影は微塵もない。「そうだな。俺には純粋な子が必要だ」

純粋。

じゃあ、私は何? 汚れてるってこと?

真琴の取り巻きである美咲が、わざと私のテーブルのそばを通り過ぎながら言った。「恥知らずもいるものね、自分の義理の兄に手を出すなんて。本当に気持ち悪い」

私は拳を握りしめた。爪が手のひらに食い込む。一週間前には私を羨んでいた人たちが、今では最も悪意に満ちた侮辱を私に浴びせかけている。

その日の午後の化学の授業は、純粋な拷問だった。

水原先生が新しい席順を発表した。海翔は最前列に移され、真琴とペアになった。私は一番後ろの隅に追いやられた。

「三浦絵里奈、新しい実験パートナーは黒川蓮だ」

心臓が沈んだ。この転校生についての噂はすべて耳にしていた――暴力沙汰で退学になり、腕にはいつも包帯を巻き、学外のバイクギャングとつるんでいる、と。

後ろの列へ向かいながら、彼を盗み見た。高い背丈を椅子にだらしなくもたせかけ、黒い髪は少し乱れ、指は銀色のライターを弄んでいる。何より私の注意を引いたのは、彼の瞳だった――夜空のように深いが、言いようのない危険な気配を宿している。

放課後に金銭を要求して追い詰めてくるような、まさにその手のタイプに見えた。

私は距離を保とうと、慎重に席に着いた。

「完璧ね」真琴が振り返って私に微笑みかける。「これで海翔も邪魔されずに済むわ」

授業中ずっと、私は最前列で囁き合う海翔と真琴を見ていた。チャイムが鳴ると、彼は彼女の腰に腕を回して出て行った。一度も私の方を見ることなく。

「お姫様は見捨てられたみたいだな」低い声が、不意に隣で響いた。

振り返ると、蓮がその深い瞳で私を見つめ、唇の端に嘲りの色を浮かべていた。間近で見ると、彼の顔立ちはシャープで整っているが、その表情はあまりにも冷たい。

「しかも、ずいぶん早いことで」

私は彼を睨みつけた。「あなたには関係ないでしょ」

彼は椅子に背をもたれ、ライターを弄び続けた。「面白いと思っただけだ。一週間前は理想のカップルだったのに、今じゃ――」彼は指をパチンと鳴らした。「赤の他人、か」

どうして人は、ここまで言葉で残酷になれるのだろう。

「チッ」彼は教科書をまとめ、立ち上がった。「哀れなもんだ」

私は午後中ずっと、苦痛の中で過ごした。どの授業でも海翔と真琴の噂話が聞こえ、角を曲がるたびに二人の親密な姿を目にする危険があった。

最後のチャイムが鳴ると、私は教室から逃げ出し、使われていない美術室に隠れた。

壁に背をもたれて滑り落ち、私はようやく声を上げて泣くことができた。一週間前、私は学校で一番羨ましがられる女の子だった。今では笑いものだ。

「そんなにそいつのことが好きなのか?」

不意に声が沈黙を破った。見上げると、蓮が戸口に立っていた。化学の授業で私が落としたノートを手にしている。

「お前の」彼は中に入ってきて、ノートを私の隣に置いた。

「そいつのためにここまで泣くなんて――価値があるのか?」彼はドアフレームに寄りかかり、その複雑な深い瞳で私を見つめている。

私は答えず、ただぼんやりと彼を見つめた。昨夜から、海翔の冷たさとクラスメイトの嘲笑の中で、誰かが悪意なく私に話しかけてくれたのは、これが初めてだった。

彼の視線は私の涙に一瞬留まり、そして背を向けて去ろうとした。「お前の涙に値しない奴もいる」

ドアが閉まった後も、私はそこに座り続けていた。どうしてこんな時に、この危険な見知らぬ人が現れたのだろう?

そして何より、どうして彼の声はこんなにも……聞き覚えがあるのだろう?

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