第102話 資産は四十億から八億まで値切られ、遠野家には電話を切る資格すらない

深夜の白木町。遠野家のリビングには、薄暗い天井灯がひとつ点いていた。

健吾はソファの中央に座り、スマートフォンの画面の冷たい光を顔に受けていた。宝石コンテストの報道が溢れかえっている。写真の中で、楓原琴音がトロフィーを抱えてスポットライトの下に立ち、余裕の笑みを浮かべている。その背後に立つ冷ややかな影こそ、九条凛だった。

健吾はスクロールダウンを繰り返した。咲良の名前はどこにも出てこない。一行たりともなかった。

「注ぎ込んだ金は、全部無駄になった」

健吾の声は高くないのに、まるで鈍い刃物でリビングの最後の体面を切り裂くようだった。春奈はソファの反対側に座り、唇を動かしかけたが、結局何も...

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