第19話 遠野一家、病室から追い出される

隼人は何も話さなかった。ただ、エレベーターに人波が押し寄せてくるたび、さりげなく体を傾けて凛と人混みの間に割って入った。

エレベーターの扉が開くと、廊下の消毒液の匂いが鼻をついた。

そして凛は見た。春奈が病室の前に立っている。

春奈も凛に気づいた。

「よくもまあ、ぬけぬけと!」

春奈が駆け寄り、凛の手首を掴んだ。

「遺産狙いで病室の前まで来たの?ここに居座れば、おじいさまが会社をあんたなんかに残すとでも思ってるの?この野良犬が!」

凛は春奈を見なかった。

春奈の肩越しに、閉ざされた病室の扉を見つめる。

「離して」

声は軽く、それでいて鋭かった。

春奈の指が、熱いものに触れ...

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