第24話 彼女と食事をした老人は、日本経済の影

石橋宗介が選んだのは、銀座並木通りにある看板を一切出していない会員制レストランだった。エレベーターで最上階へ上がり、廊下の突き当たりには木格子の扉が一つ。開けると、別の世界が広がっていた。八つのテーブルが、それぞれ磨りガラスで仕切られている。

宗介は一番奥に座っていた。

七十六歳。身体は痩せて小さく、縮んだ雀のようで、灰色の古いニットを着ている。地下鉄で会えば、退職した中学教師としか思われない。

だが、この老人はくしゃみ一つで日経平均を震わせる。

日本経済の本当の黒子であり、六十年の投資嗅覚と絶対に冷徹な判断力で、戦後の瓦礫から這い上がってきた男だ。

「三分遅刻だ」宗介が老眼鏡の上か...

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