第27話 遠野夫妻は二階にすら上がれない

祝勝会の会場は、港区の会員制高級ホテル最上階に設けられていた。

健吾はネクタイを直し、受付に立った。係員が差し出された名刺を受け取り、一瞥して、慇懃に一般賓客用のエリアへと案内する。

「こちらへどうぞ」

春奈が後ろにぴたりとつき、パーティーバッグのチェーンを指で握りしめている。遠野家がやっとの思いで手にした招待状だった。今夜は東京の名士の半数が顔を揃えるという。

宴会場にはシャンデリアが輝き、ドレスに身を包んだ男女がシャンパングラスを傾けながら談笑している。空気には上品な笑い声が浮かんでいた。

健吾はウェイターのトレイから赤ワインを手に取り、人波を見渡した。

「あちらは石橋財閥の部...

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