第28話 更衣室に第三者はない

宴会場の照明が、グラスの行き交う合間に流れている。

結衣はシャンパンタワーの傍らに立ち、指先でグラスの脚をなぞっていた。視線は人混みを越え、入り口から現れた影に注がれている。

鷹司隼人。

黒いスーツが肩の線を鋭く縁取っている。入り口に立ったまま、会場全体を見渡した。

結衣の呼吸が浅くなる。

このジュエリー展の祝賀会は、鷹司家の公式日程には入っていない。ここへ現れた理由は、ひとつしかない。

——自分のため。

結衣は睫を伏せ、耳元の髪を指先で整えた。それから顎を上げ、その方向へ歩き出す。

十歩。鷹司隼人の視線がこちらを向いた。結衣の唇に、ちょうどよい微笑が浮かぶ。

五歩。わずかに...

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