第29話 鷹司家、遠野建設への締め出しを公に宣言

健吾を失望させたのは、凛が一度も振り返らなかったことだ。

健吾が凛に断親書への署名を迫ったあの瞬間、凛はもう彼らと何の関係もなくなっていた。

車は港区へと入っていく。優香は凛の手を握りしめたまま、指先がまだかすかに震えている。

「今の人たちは?」

「遠野夫妻です」凛の声はひどく平静だった。

優香の呼吸が一瞬止まった。次の瞬間、その瞳の奥に、凛が今まで見たことのない鋭さが浮かぶ。貴弘の中で、遠野建設を買収したいという思いがさらに強まっていた。

「あの者たちが、凛を十八年も虐げてきたのね。よくもぬけぬけと凛の前に現れられたものだ」

「お母さん」凛は優香の手を押さえた。「私に考えがあり...

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