第36話 偽令嬢、飛びつくも避けられる

結衣はLINEで最後のメッセージを確認した。

「明日の午後、カメラを外すな」

相手は「OK」とだけ返した。

結衣はトーク履歴を削除し、ベッドに寄りかかって天井を見つめた。

欲しかったのは偶然の出会いではなかった。

欲しかったのは“証拠”——SNSに載せれば、誰もが一目で恋人同士だと信じるような親密写真だった。腕を組んでいるところでも、顔を寄せて話しているところでも、できれば隼人が見下ろす瞬間を捉えた一枚。

アングルさえ狡猾で、光の具合さえ曖昧なら、「鷹司財閥御曹司、九条家令嬢と仲睦まじく本社に現る」という見出しをつければ、世論が残りを片付けてくれる。

そうなれば、鷹司家が否定して...

ログインして続きを読む