第39話 彼女は問わずに彼を信じた

貴弘や優香と挨拶を交わす余裕もなく、隼人は軽く会釈しただけだった。凛の前まで歩を進めると、まだ息が整っておらず、額にうっすらと汗が滲んでいた。

「トレンドを見て引き返した。防犯カメラの映像は——」

「いらない」

凛は顔を上げた。淡いグレーの瞳が鏡のように静かだった。

「もう調べ終わってる。盗撮した男のIPは中野区。結衣との通話記録も全部引き出した。映像も流した」

一拍置いて、凛は言葉を継いだ。

「最初から一度も疑ってない。だから急ぐ必要はなかった」

隼人はその場に立ち尽くし、タブレットを受け取ろうと伸ばしかけた手が、ゆっくりと下りていった。喉仏が上下する。

顔を横に向け、再び凛...

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