第56話 彼女が天馬を警察に突き出さない本当の理由

隼人は携帯の画面を数秒見つめ、ふっと笑った。

「やっぱり……とんでもない女だ」

片足を上げ、再び起き上がろうとした麗奈の彼氏を蹴り飛ばす。男はゴミ袋のように壁へ叩きつけられ、二度と立ち上がらなかった。

「凛に殴られたなら、先にちょっかいをかけたのはお前だ」

隼人はそう言い捨て、携帯をスーツの内ポケットにしまった。

隆馬が複雑な顔で隣に立っていた。

「……あのお方、結婚後、あなたを骨折させたりしませんよね?」

隼人は携帯のストラップを軽くなぞり、笑った。

「彼女は強いからな」

その声は救いようがないほど甘い。

隆馬は黙ってため息をつき、新宿の鈍く暗い空を見上げた。


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